自社株買いとは?企業側・株主側にわけてメリットをわかりやすく解説

自社株買いとは?企業側・株主側にわけてメリットをわかりやすく解説

自社で発行している株を買い戻す「自社株買い」。

近年では自社株買いを活用する企業が増えてきています。

 

2018年度は株式相場全体で行われた自社株買いの金額が、過去最高だった2015年を抜いてトップとなりました。

 

なぜ企業は自社株買いを行うのでしょうか?

この記事では、自社株買いが企業と株主にどのようなメリットをもたらすのかを解説します。

 

目次

自社株買いとは

自社株買いとは、企業が自社で発行している株を買い戻すことです。

 

本来、企業が株式を発行するのは、投資家の投資を集めて企業を発展させるためです。

自社株買いは市場に流通している株式を再び買い戻してしまうため一見、株式本来の意味を見失っているように思えますよね。

 

しかし、自社株買いにはさまざまなメリットがあり、企業にとって重要な経営戦略の1つです。

自社株買いには株主還元や株価の上昇など、株主にとってメリットが多く、企業が「株主への利益還元」の姿勢を示すニュースとして株主、とくに個人投資家にはおおむね喜ばれる傾向にあります。

 

2019年にはソフトバンクやソニー、ディーエヌエーといった大企業も次々と自社株買いを発表。

その動向に注目が集まっています。

 

自社の株式であっても、「自分の株だから回収します」と直接回収できません。

自社株買いは基本的に証券会社を通じて行われます。

 

また、自社株買いには細かいルールが定められており、企業はそのルールに則って自社株買いを行わなければなりません。

自社株買いは多額の資金が動くため、株価に大きな影響を与えることがあります。

 

株価を故意に吊り上げる行為が行われないよう、企業は事前に自社株買いの設定金額日時を発表しなければなりません。

 

自社株買いを行う場合、企業は事前に発表した日時に従って株式市場で買付するか、取引時間外に「ToSTNeT」というシステムを使って買付します。

ToSTNeTは東京証券取引所(東証)が提供する取引システムで、取引時間内に買付をすると、あまりにも株価に影響を与える場合に使用されます。

 

その他、詳しくは日本取引所グループの「自己株式取得内閣府令等について」のページで確認できます。

 

自社株買いによる企業側のメリット

株式を回収するという、一見目的が見えない自社株買い。

しかし、企業側にもさまざまなメリットをもたらすことが注目されており、近年では多くの企業が自社株買いを発表しています。

 

この記事では、以下の3つのメリットを解説します。

 

株価上昇により、経営が安定する

自社株買いを行うと、会計上の経営状態が改善できます。

それに伴い、企業イメージをアップさせられるのが自社株買いの最大のメリットといっていいでしょう。

 

自社株買いによって流通している株数は減りますが、業績自体が下降しているわけではありません。

そのため、利益数値の点から見ると、1株当たりの価値や収益性が改善します。

 

たとえば、1株につき10本のジュースを還元する制度があったとします。

100株のうち20株を自社で買い取った場合、100株でわけ合っていた1000本のジュースを、今度は80株でわけ合うようになります。

 

わけ合うジュースの本数はそのままなので、1株当たりのジュースの還元本数は12本に増えるわけです。

もちろん、回収した分の配当金を今後どうするかは企業によって戦略があるかもしれませんが、自社株買いを行った企業はおおむね株主還元を強化する方向性にあります。

 

自社株買いの発表は「私たちの株は今がお買い得ですよ。これから私たちはより成長していきます。あなたたちにとって投資甲斐のある企業になりますよ。」というアナウンスメント効果を持っています。

株主還元が厚くなると、その株は人気が出て買われるようになります。

 

株価水準が上昇すると企業イメージもアップし、期待感が高まって投資家がつきやすくなるため、一層企業が発展していくことができるのです。

 

企業の買収対象になることを防ぐ

買収防止策として自社株買いを行う企業もあります。

前述したように、自社株買いは株価水準を上昇させる傾向にあります。

 

企業の買収手段として、株式を買い占めるというものがありますが、株価が上昇すると買収資金もより多くかかるので、悪意ある買収行為に対しての予防策になるのです。

また、自社で買い戻した株式を消却せず、そのまま保有することで、自社の株式保有率を高めることになり、これも買収対策になります。

 

ストックオプションに利用できる

3つ目のメリットとして、買い戻した株式を従業員に「ストックオプション」という形で還元できるというものがあります。

ストックオプションは、定められた金額で自社の株を購入できるという権利を付与する制度。

 

つまり、今後自社の株価が一気に上昇しても、ストックオプションを付与された時に定められた金額で購入できるため、時価で売却すれば利益を得られます。

自社の業績が上がり、株価水準が上昇すれば、従業員や役員は利益を得られるので、自社により貢献するようになります。

 

還元だけでなく、従業員へのインセンティブを示すことで人材の流出を防ぐことができ、「あの会社は待遇がいい」という理由で、優秀な人材が集まりやすくなります。

 

自社株買いによる株主側のメリット

 企業側だけでなく、もちろん株主側にもメリットがあります。

 

自社株買いは1株当たりの資産価値が向上します。

株価水準が上昇する傾向があるので、株の売却による利益増加を見込めるのです。

 

また、配当金が増加することも多く、既存株主であればさまざまな面でメリットが多いといえるでしょう。

 

自社株買いにはデメリットもあるので注意が必要

 株主にとってもさまざまなメリットがあることから、自社株買いの発表は大きな注目を集めます。

また、自社株買いを発表した企業の株を買いに走る投資家も多くいます。

 

しかし、必ずしもよいことばかりではありません。

動向を見極めなければ、自社株買いのニュースに踊らされて思わぬ損失を被ることもあります。

 

以気をつけるべき注意点を見ていきましょう。

 

必ず株価が上がるわけではない

自社株買いを実施すると、株価水準が向上しやすくなりますが、必ずしも株価が上がるわけではないことを覚えておきましょう。

自社株買い後の株価は、企業が回収した株を「消却」するか「保有」するかによって大きく左右されます。

 

消却する場合、流通済株式数が減少するため1株当たりの価値が上がりますが、買収対策やストックオプションとしての利用を目的として、そのまま保有し続ける場合があります。

この時、流通地味株式数は減少せず、1株当たりの価値は据え置です。

 

また、企業が保有していた株式を再び売却した場合、むしろ株価は下落する可能性があります。

このため、自社株買い後の株価の動きを見定めるには、企業の動向をよく見る必要があるのです。

 

発表後に絶対自社株買いが行われるとは限らない

企業によっては、自社株買いを発表しただけで、実際に行わない場合もあります。

自社株買いは企業への期待感をあおり、実際に行われる前から株価が上昇します。

 

これを利用して、自社株買いの発表だけで株価を操作しようともくろむ企業もあるのです。

業績が下降気味の企業が自社株買いの話題性を利用して業績の好転を図ることもあります。

 

そのような場合は、本当に自社株買いが行われるか、企業の信頼度を確かめる必要があるでしょう。

以前に同様に自社株買いを発表し、実際に行った実績があるかどうかを確かめるのがおすすめです。

 

まとめ

 自社株買いにはさまざまなメリットがあると同時に、注意点もあります。

2018年度から2019年度にかけてとくに頻繁に行われるようになってきたため、これからも耳にする機会は多いと思われます。

 

自社株買いを発表した企業に投資する場合、評価をしっかり見定めてから投資しましょう。

 

 

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