国内の株式投資においてはあまり使われることのない指標ながら、欧米では重要視されている指標の一つとしてPSR(株価売上高倍率)があります。
2014年以降、約6割の投資家が外国人になったと言われる日本市場においても、もはやPSRは無視することのできない指標になりました。
PSRとはどのような指標なのかを詳しく解説し、株式投資に対してどのように生かすと効果的なのかを分かりやすく紹介していきましょう。
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PSRとは
PSRは「Price to Sales Ratio」を略した言葉であり、日本語では株価売上高倍率という言葉に置き換えて使用されています。
これは、簡単に言えば売上高から株価を見た際に、現在の株価が割安なのか、それとも割高なのかを判断する際に活用できる指標です。
PSRを割り出す際には、株式時価総額を売上高で割るという計算式を用いることになり、赤字の会社に対しても数値を算出できることがPSRの特徴になっています。
PERやPBRとの決定的な違い
同じような目的で活用されている指標としては、PSRのほかにPER、あるいはPBRといった指標を挙げることができます。
これら2つの指標とPSRで決定的な違いとなっているのが、PSRだけが赤字や債務超過の企業も数値化することを可能にしているという点です。
まずPERには、株価÷1株あたり純利益という計算を用いることになりますから、利益が出ていない会社を数値化することができません。
PBRは株価÷株あたり純資産という計算式を用いるので、負債を考慮することはできますが、一方で債務超過に陥っている場合には数値化することが不可能です。
PSRが重んじられない理由
PSRは赤字や債務超過の企業も数値化することができるのですが、日本ではあまり広まっていない指標と言えます。
何故かと言えば、日本国内で上場されている企業のほとんどが黒字経営を行っており、PSRを用いなくても経営状況を認識することが可能であるためです。
そのため、大半の投資家がPERやPBRを重視した投資を行っており、PSRに頼ることなく投資を完結させています。
PSRを使うとわかること
PSRを活用して投資先を探すと、業績不振が原因で売られ過ぎになっている狙い目の銘柄を見つけやすくなります。
PSRの数値が0.5倍を切るほど小さな数字になっており、なおかつ倒産のリスクが少ない大型株であるという場合には売られ過ぎと判断できます。
割安で購入できることに加え、空売りを行った投資家による買戻しにも期待できますから、このタイミングは絶好の買いチャンスと捉えることができるのです。
それとは反対に、ベンチャー企業など経営が注目されている小規模な会社の場合には、売りを基本とした戦略を立てることが求められます。
将来性が有望な会社だとしても、規模が小さければ発行済みの株式総数も少なく、株価があっという間に上昇していく傾向が見られます。
株価が上がると同時にPSRも加速度的に上昇していきますが、PSRは高すぎると「買われ過ぎ」というシグナルになることを今一度整理しておきましょう。
つまり多くの投資家から買われ過ぎな銘柄として扱われてしまうと、売り注文が膨らみ、一気に株価を下げてしまう恐れがあるのです。
目安としては、PSRが20倍以上になっている会社の株式は割高と判断し買い注文を避けた戦略を取ることがおすすめになります。
PSRを使った投資先の狙い目はIPO
前述した通り、日本国内の上場企業は、少なくとも表面上は黒字で運営されている会社ばかりなので、PSRが活躍する場面はあまり見つかりません。
しかしIPO、新規上場株に関しては赤字の企業が参入することも多いため、ここで有望な株を見極めたい場合にPSRは使い勝手の良い指標になります。
公募価格を確認したり、IPOによる上場直後の株式を購入したりする際には、PSRを使うと投資先として有望な会社を見つけやすくなるのです。
赤字の企業でも株価が下がらないことは多い
常識的に考えれば、赤字を計上し続けている企業の株が買われるはずがないと思ってしまいがちですが、実際には赤字続きでも株価が下がらない企業が存在します。
純利益で赤字を計上している企業だとしても、その原因が先行投資等にあり、魅力的な事業を展開している場合には、徐々に売り上げを増やすことに期待できます。
売り上げが増加すれば、必然的に純利益も上がっていくことになり、その際にはPSRの数値が反比例して下がり、割安を示す水準へと徐々に変動していくのです。
PSRを使った具体的な投資術
PSRを使った具体的な投資術としては、前年度やそれ以前の売り上げと純利益を確認し、Pどのような動きを見せているのかを確認することがおすすめです。
例えば3年前の売り上げが10億円で、当時の純利益がマイナス1億円の会社を見つけたとしましょう。
2年前には売り上げが20億円に伸び、純利益はマイナス5千万円に減っていた場合、その会社はまだ赤字ですが、順調に伸びていると考えられます。
そして1年前のデータで売り上げが30億円になり、純利益はマイナス2千万円という場合、赤字から黒字への転換が近い会社として評価できるはずです。
このように業績の向上に合わせる形で、PSRの倍率も年々低下している会社であれば、例え現在は赤字だとしても、近い将来の黒字転換を見込めると投資家が判断します。
その結果として株価が「割安」と見られるため、売り注文が集まりにくくなり、赤字の会社だとしても株価が下がらずむしろ上がるという現象が起こるのです。
PSRが下がり続けていても確実な買いサインではない
では、赤字経営が続いている会社でも、PSRが下がっていれば順調に伸びていると判断できるため、確実な買いサインであると確信しても良いのでしょうか。
その答えは残念ながらノーです。
売り上げが数年前と比較して大きく上昇していたとしても、純利益に変動が出ない、あるいは売上高から見た赤字が膨らんでしまっているという場合には株価が上がりません。
例えば100億円の売り上げに対する純利益がマイナス40億円の場合と、200億円の売り上げで純利益がマイナス40億円の場合とでは、PSRは後者のほうが下がります。
しかし経営の実態を見てみると、売り上げが倍増しているにも関わらず、純利益は全く変わらずに赤字経営が続いていることがわかります。
つまり、せっかく増やした売り上げを事業に費やし、それが赤字になってしまっているということを意味しているのです。
100億円に対する40億円の赤字と、200億円に対する40億円の赤字とでは、むしろ支出した金額そのものは後者のほうが高いと判断することもできます。
こういった事情を持つことから、PSRが着々と下がっている銘柄だとしても、純利益を伸ばすことのできない会社には投資家からの人気が集まりません。
PSRだけを見て割安と判断できる銘柄を見つけたとしても慌てて買いに走らず、本当に将来性を見込める会社かそうでないかを慎重に見極めましょう。
まとめ
株価売上高倍率を意味するPSRは、赤字や債務超過に陥っている会社を評価する際に用いると便利な指標で、PERやPBRでは測れない数値を算出できます。
国内の上場企業の大半が黒字なので、あまり活用する機会はありませんが、赤字のまま上場を目指すIPO株に対してはPSRを使うと有効です。
純利益がマイナスなままの会社でも、順調に売り上げを伸ばして業績を上げている会社なら、将来的な株価の上昇に期待できます。
しかしPSRが下がり続けている会社だとしても、赤字を解消できていない場合には株価の上昇に期待できないため、注意しなければなりません。
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